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和光市役所福祉政策課

和光市で新たに取り組みをはじめたわこう版ネウボラについて、保健福祉部長の東内さんにお話をうかがいました。

-「妊娠期からの切れ目のない支援~わこう版ネウボラ~」の内容や特徴を教えてください。


保健福祉部長の東内さん

和光市の子育て支援「ネウボラ」ですが、その前段に介護保険の世界で取り組まれている「地域包括ケアシステム」が模範となり構成されています。介護保険では、高齢者が要介護の認定を受けた場合、

・介護の支援が必要になる人
・介護と医療の支援が必要になる人
・介護と医療と住まいの支援が必要になる人
・他にも虐待や認知症に関わる支援が必要になる人

など、人により支援内容が異なります。それぞれの支援を個別に行うのではなく、高齢者の問題をまとめて解決するために、ひとつのチームを作って支援提供していくことが「地域包括ケアシステム」です。

このシステムでは、システムのプランニングを行うケアマネージャーや地域包括ケアセンターの職員が存在し、実際に高齢者と接するホームヘルパーや医者などがひとつのチームとなり支援していきます。今までは、ホームヘルパーが個別に支援したり、医者が個別に診療したりする縦割り構造となっていたためうまくいかない場面がありました。そのため、縦割りでの支援を排除して、チームとなって支援をする「包括ケア」という方向になってきました。その延長で、和光市では支援対象を子どもにも向けていきました。

たとえば、出産後、病院から自宅に帰ってくるときに、自宅の環境を整えなければいけないケースもあります。これは、生まれた時に障害があったり、里帰り出産をして相談できる人が近隣にいなかったりなど、赤ちゃんと共に自宅に帰ってきたときに、どのような環境を整えるべきかという課題にも、妊娠から出産まで関わると発見することができます。

他にも、母親が子育てで鬱になってしまったり、沐浴の仕方など育児方法を教わる機会がなかったり、母親に軽度の知的障害があったりする場合もあります。このような方々にも支援が必要ですよね。今まで集団的な支援はありましたが、個別性に合わせて様々な事象に対して支援を充実させるようにしました。訪問する看護師が沐浴やほ乳瓶の煮沸についてレクチャーをしたり、赤ちゃんにてんかん発作が起きた場合の判断を教えたりします。里帰り出産で、近隣に相談できる人がいない場合には、ショートステイといって、泊りがけで子育てについて教わることができる場も設けています。

こうしたリスクのある家庭に対して、個別に支援ができるようになったことがネウボラの第一歩です。きちんとしたケアを行うためのプランを作り、そのプランに基づいて課題を解決するための個別支援を行い、個別支援から集団の場にデビューさせることをコーディネートします。妊娠から出産、小学校入学までを、個別に支援することが最大の特徴です。
-「わこう版ネウボラ」を導入した経緯やきっかけを教えてください。

和光市の子どもを取り巻く現状と課題は、人口の流動(もしくは「転入・転出」)が多く核家族化が進んで、母親と子どもが孤立してしまうことです。母親の両親が地方に住み、母親が里帰り出産をして和光市に戻ってきたとき、父親は仕事で残業続き、自宅には母親と赤ちゃんだけになってしまいます。この状況を「準孤立状態」と呼んでいて、自ら進んで子育て支援サロンに行ける母親はまだ良いのですが、なかなか行くことができず、「赤ちゃんが風邪をひいてしまい、看病しなければいけないが、看病の仕方にも不安がある。でも、相談者がいない。」といった母親が和光市には多くいます。また、障害を持って生まれた赤ちゃんだったり、早期に支援をスタートしなければいけない状況だったりする場合があることも分かっています。

今までは、集団的な赤ちゃん健診により、支援が必要な人を把握し、一定の支援ができていましたが、「健診に来ない場合はどうするのか」「健診に2ヶ月遅れで連絡があったらどうするのか」など、支援が行き届かない家庭があることも分かってきました。このようなことがあり、母親の妊娠期から関わるべきである、という考えになってきました。


わこう版ネウボラの基本構想

そこでまず、母子健康手帳については、戸籍住民課が事務的に妊娠届が提出されると母子手帳を交付していましたが、母子保健コーディネーターが配置されている子育て支援センターで交付するとともに、その際、保護者にヒアリングを行い、「出産にあたって経済的に不安がある」「シングルマザーである」「里帰り出産を考えている」「和光市には相談者がいない」など、抱えている課題を明らかにしていき、妊娠初期から出産後の予測できる家庭が抱える課題まで解決していこうと取り組みを始めていきました。
-フィンランドの制度をモデルにされているかと思いますが、導入にあたり、工夫された点を教えてください。

子育ての場や保護者の居場所を作るのがフィンランドのネウボラですが、和光市独自としては、妊娠から子育てまでに起こる課題を抽出することが最大の特徴といえます。

保護者が赤ちゃんに食事を与えることが難しい場合には、訪問看護や子ども専用のホームヘルプなどを取り入れ、保護者が徐々にミルクを作ったりすることができるように支援をしていきます。また、6ヶ月後には、赤ちゃんの世話ができるようになるよう目標を定めて自立支援も行います。他にも、生まれた赤ちゃんが障害を抱え、保護者が子育てをしていくのが難しい場合があったりしますが、このようなときは、祖父や祖母を呼んで手伝ってもらうことをプランに含んだり、訪問看護を取り入れて赤ちゃんと保護者のケアをしていったりするようにします。これも3ヶ月後には、保護者ができるようになるよう目標を決めてレクチャーしていくプランを組みます。赤ちゃんが安定するところまでケアしていくことを、期間を決めて実行していきます。ネウボラの個別支援を組み入れて、自立した子育てができるようにするのです。


妊娠届出書と一緒に提出するアンケート内容

また、障害のある赤ちゃんが成長する中で、障がい者向けの支援がある機関を利用すべきか、それとも保育園で育成保育をしていくのかといった、小学校入学までのマネジメントもしていきます。母子保健と子ども福祉、障がい児の問題も、縦割りの支援ではなく、年齢に応じて必要な支援を行っていくことが、切れ目がなく包括的な支援をすることになります。

その他、病院の主治医と医療連携相談室のソーシャルワーカー(MSW)が、障害を持った子どもが退院にした後、自宅で生活するときに必要な人材と医療用具やベッドなどを自宅に用意するためのサポートを行うこともしています。在宅の環境を整えるために、医療と福祉が連携を取って、チームで取り組んでいかなければ安心して退院できないと思っています。こういったことができることも、ネウボラの良いところだと思います。
-利用している市民からの反応(感想や意見など)を教えてください。

母子健康手帳を取りに来るのが子育て支援センターになり、近くなって良かった、という声や、これから初めて赤ちゃんを産む母親からは、子育て支援センターは保育園に併設しているため、子どもが将来、こういう保育園に通うことになるのが分かって良かった、という声もありました。共働き家庭の場合、保育園に子どもを預けたいニーズが高いため、0歳のときはどのように生活するのか、3歳や5歳のクラスでは何をするのかなどの中身が見えるようになってきていることが大きいと思います。また、すでに保育園に子どもを通わせている子育て中の母親の様子も見ることができて参考になる、と感じてもらえることも大きなメリットです。

サービス開始時は、母子健康手帳の配布時や健診の時に、リスクを抱えた保護者を行政が見つけていたのですが、今ではリスクがあると感じて自ら手を上げ、質問してきてくれる保護者が増えてきました。「健康診断で診断を受けて病気が分かることよりも、未受診の方にこそ大きなリスクが隠れている」という考えのもと、様々な事情で赤ちゃんの健診に来なかったり、健診に遅れたりする家庭に対して、身近な子育て支援センターから自宅訪問することにより、潜在的なリスクを早期に発見できるようになってきています。これも和光市ならではの支援内容だと思います。
-将来的にはどのようなものにしていきたいと思っていますでしょうか。

これから少子高齢化の時代です。「共生」をキーワードとしている和光市には、高齢者向けの地域密着型サービス、小規模多機能型居宅介護サービスという、軽度の認知症の方をケアする場所が5ヶ所あり、そこに地域交流スペースを設けています。ネウボラを進めていく中で、このような地域交流スペースに、近隣に住む健常な子育ての経験のある高齢者と子育て中の家庭が常時交流をしながらケアをする集いの場を通じて、共生型支援を導入していきたいと考えています。地域で支援ができるようになると、多くの家庭に対応できるようになっていきます。今後は、課題量が多くなり、支援の需要が増えていくと考えられるため、供給の面でも地域密着型支援の「交流」の面を利用し、事業の拡大を図っていきたいと考えています。市民のニーズにより応えられるような形に持っていきたいと思います。

これら支援の究極のゴールは、出生率が上がっていくことだと考えています。今後も結婚や妊娠の段階での問題が発生していくと思いますので、ネウボラのようなシステムがあることを、20代、30代に周知していくことが大切と考えています。「保育園が足りない」「産休の理解が職場にはない」などの問題も含めて、ネウボラという支援サービスがあることを広めていきたいと考えています。

保護者の視点から見たとき、子育てにおいて「何が課題となるのかが分かっていない」ことが課題となってくるかと思います。仕事と出産、産休明けの仕事と育児の両立を応援していきたいですし、大きな意味では「生活・暮らし・子育て」に対するより良い環境を提供していきたいと思っています。

【関連情報】
平成27年度 わこう版ネウボラガイド

 

基本情報


和光市役所福祉政策課

施設名:和光市役所福祉政策課

所在地:〒351-0192 埼玉県和光市広沢1-5

電話番号:048-464-1111(代表)

FAX番号:048-466-1473

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